寒さが厳しくなってきたこの頃、「あ、雨が降っているな・・・」と思っていたらいつの間にか小さな雪やミゾレになっていたりする。
事務所で仕事をしていても、なんだか寒いなと思って外を見るとやっぱり雪が降っていたりする。でも雨と違って雪だと傘を差さずに自転車を走らせていても上着がびしょ濡れになる心配があまり無いのが良い。傘差しながら自転車こぐのって結構危ないから。
寒い日が続くので、毎晩仕事の後に焼酎のお湯割りや熱燗など身体が温まるお酒ばかり飲んでしまうし、また特にそういう飲み物が美味しく感じる。
この頃は以前と違ってちゃんと休肝日を作っているので、身体にかかる負担も少ない。
この前は自分がまだ20歳前後だった頃からの友人が訪ねて来てくれたので清吉さんと一緒に3人で飲んだ。
その友人は事情があって今仕事をしていない。精神障害者福祉保険手帳の所持者なのである。
彼は自分と知り合った当時から、精神的にそういった兆候があり通院していた。
知り合ったばかり頃から数年後に、自分の職場で雇って働いてもらった事もあったのだが、その頃にはその症状も落ち着いていたので、特に変わった所は感じられなかったのだが・・・
歳を取るにつれて、またそのような兆候が時々出始めてきていたようだ。
精神科の医師の判断だとうつ病と統合失調症の中間、という診断結果だったそうである。
その話は本人から居酒屋で聞いたのであるが、それってつまり正常って事なんじゃ(笑)?!と思って、本人には失礼だと思ったけれど、思わず笑ってしまった。
彼は江戸川にある施設に今、お世話になっており国から受給を受けて生活している。
施設では数人で同じ部屋に住む相部屋だそうだ。そういう施設はボランティア団体からの差し入れなども多く、彼がその時着ていた衣類も差し入れしてもらった物らしい。
そのような施設に差し入れされる衣料品は何でもユニクロの服が一番多いらしく、彼がその時着ていた服もユニクロの物だった。
本人は“ユニロク”と言っていたが・・・
「“ユニロク”じゃなくてユニクロですよ。」と訂正したが、彼の中ではユニクロはすっかりユニロクになっているらしく、最後まで言い間違えたままだった。
自分は仕事の後にほとんど毎晩お酒を飲むが、いつも楽しい酒・明るい酒であって、自棄酒や悲しいことや辛い事があって、それらを紛らわす為に酒を飲んだ・・・という覚えが無い。
逆に悲しい事や辛い事があった時はあまり酒を飲む気にならない。飲んだとしてもあまりお酒がすすまないのである。
悲しみや辛さを誤魔化す為に酒を飲まないのだから、ある意味それは幸せなのかもしれない。
そういう飲み方ってなんだか悪酔いしそうである。
昔からの友人と清吉さんと3人で飲んだその時も、昔の思い出を肴に飲んだりした。
しかし、今働いていない友人から今後どうするか?といった話題は出なかった。
当面、どうする事も出来ないのでジタバタしても始まらない、と言ったところか・・・自分も「出来るならその施設を出て職を見つけて働いた方が良いでしょう。まだ隠居するには若すぎる歳なんだから」とだけ言っておいた。
彼が今後どうするか?!は彼の意志次第としか考えられない。
来月も3人で会って酒でも飲もう、という事でその夜は別れた。
来月か再来月くらいには、彼がその施設を出て仕事を見つけました・・・なんて報告が聞けたら良いな、と思う。
この前夕方からの営業だった時に、清吉さんと一緒に参宮橋のフレンチまで食事をしに行って来た。有名なお店で、自分が料理人をやっていた頃から名前を良く聞くお店だったのだが、以前一度人に連れて来て貰って以来だから4,5年ぶりの再訪だった。
食前酒はシェリートニックにして、アミューズが出たのでグラスのシャンパンに変えた。
前菜は寒かったので熱いモツのラザニア、焼きたての自家製パンが2種類出てきた。外は寒かったし(ちょっと雨も降っていた)お腹も減っていたので、やけどしそうに熱いラザニアが胃にしみてとても美味しかった。
スープか魚料理のプリフィクスは鯵と甘海老のスープ・ド・ポワソン、ちゃんとルイユと薄切りのカリカリに焼いたバゲット、チーズおろしでおろしたチーズがたっぷりと付いていた。
そのスープ・ド・ポワソンは鯵と甘海老でシンプルだけど深い味だった。
普段よくスープ・ド・ポワソンを食べる店ではもっと多種類の魚介類を使っていて、それはそれで相当美味しいのだが、このお店のシンプルな材料のスープも普段食べる物よりはさらっとしていたけど、甘海老の香りが良くてかなり美味しかった。
バゲットにルイユを塗ってチーズを乗せてスープに落として食べる。
途中でグラスの赤ワインを頼んだ。
メインは蝦夷鹿のローストだった。
これで昨年の冬以来食べたかった鹿肉を食べたので、一応念願かなったのだが、たしか自分が本当に食べたかったのは鹿の内臓も入った味噌仕立ての汁物やニンニクしょう油で食べる刺身だった様な気が(笑)
やっぱり子供の頃から食べつけた味覚が、昔食べた味を欲しがっているからだろう。
でも、そのお店の蝦夷鹿肉のローストは今まで都内で食べたどこ店のそれよりも美味しかった。上手に食べごろにエージングされているし、すごく柔らかい。
ナイフで切った時の肉汁や血のしみ具合も良くてソースとの相性がとても良かった。鹿肉は子供の頃から散々食べているから、肉の善し悪しはよく分かる。
デセールは何種類から選んでもらうスタイル。清吉さんは苺の練乳スープ仕立て(苺アイスが一緒に盛り付けられていた)と紅茶、自分はグレープフルーツをカンパリのゼリーで寄せたテリーヌ(パイナップルのシャーベットが添えられてレモングラスの葉がちらしてあった)とホットコーヒーだった。
色の違う2種類のグレープフルーツを小さく切ってモザイク模様に組んであり、とても綺麗だったし、レモングラスの香りがすごく良くマッチしていた。
昔の若かった頃の自分なら、デセールは温かいフォンダン・ショコラにしていたことだろう。でももう歳なので食事の後に重いチョコレートケーキは食べられない。
少し前からそう感じる様になったのだが、フレンチって食前酒や食中酒飲みながらのせいかもしれないけど、大抵メインの前に一度お腹がいっぱいになってくるような気が・・・だから途中で出てくるパンを食べるのをセーブしたりして、メインを食べられるようにいつも食事中に調整したりしている。
ソースや調理法に凝ったフレンチは、たしかにとても美味しいのだけれど、歳取るとやっぱり和食が一番なのかもしれない?!
でも、清吉さんとはいつも寿司屋か居酒屋、焼き鳥屋しか行かないのでたまには別の趣向の店に行くのも良いなと思った。本人もその店をとても気に入っていたようだし。多分来月も一緒に行くだろう。